強盗事件


  まだ、オレが郵便局で仕事をしていた頃のお話デス。。。

 199x年2月14日、16:30頃。それは突然訪れた。その日は、いつものように仕事をし、いつものように帰るはずだった。貯金の窓口に入っていたオレは、きちんとお金を合わせ、様々な雑用を光の速さで処理していた。

 と、その時、郵便にいた二人の女性が、突然机の下に潜り込んだ。
 「????」。
 何が起こったか、全く理解できない。はっきり言って、最初地震が起きたのかとマヂで思った(笑)。
 仕方ないので、オレも机の下に潜り込む。なんかあほみたい・・・・。
 とその時、郵便の窓口の前にいた男が何か言った。

 「・・・・を出せ」
 は?よく聞こえない。

 「金を出せと言ってるんだ!」

 今度は聞こえた。・・・・が、頭の中が真っ白になった。『金を出せ、金を出せ金を出せ・・・・』。「・・・・!!!」
 な、なんですと〜〜〜〜〜〜!!!。


 〜〜参照@〜〜
 当時のレイアウトです。
 貯金の窓口は4時に閉まるので、
 オレと、もう一人の貯金担当者の前には、
 ついたてがあり、前が全く見えない状態。

 強盗は入ってきた後、
 しばらくバーの前にいたが、
 自分の視界にいる女性職員のところへ行って、
 金の要求を始めたらしい。

 ※下手な絵だけど、意味は理解してくれ


 強盗は、作業着に、帽子を被り、マスクをしている。・・・・強盗スタイルそのままだな。年齢は60歳くらい。それらのことを適当なメモ用紙に書き殴る。強盗は早く何とかしたいようだが、目の前の女性職員は机の下に入ってしまい交渉相手がいない。そのため、しばらく困ったように立ち尽くしているが、強盗との交渉なんてしたことないし(当たり前か)、入省(この当時はまだ郵政省)1年生のオレにはどう考えても荷が重過ぎる。しかし、だれも交渉のテーブルに就こうとしない(そんなもの誰もしたくないわな)我々に対して、強盗はだんだん苛立ってきたようだ。
「早く金を出せと言ってるんだ!!」
 その時、隣にいた総務主任のKが「今郵便局にお金はないんですよ」と交渉開始。さすが肝っ玉母さん、恐れ入ります。「お金は4時を過ぎると全部別のところへ送ってしまうから」などと、ほんととも嘘ともとれるようなビミョーな会話で説得を試みる。
 「今これしかないから、これで勘弁して」と、数枚の1万円札を見せる。 
 強盗は信じられないといった表情だが、結局1万円札4、5枚受け取って納得したのか(させられたのか?)、しぶしぶ退散する。・・・・そんなもん本気で信じんなよ!。

 ふー、終わったか。んじゃ帰り支度を・・・・と思ったら、「天戯さん追っかけて!」ときたもんだ。へいへい、仕方ないですな〜と思ってカラーボールを持って追いかけようとしたら、「銃を持ってるから気をつけて!」だってよ。・・・・どうやって気をつけるんだ?勘弁してくれ。 

 とりあえず外に出てみる。いない。逃げる方向は1/2だ。当てずっぽうに右へ行ってみる。・・・・いた!。なんと民家(というかアパート?)の脇の細い隙間を抜けている。こんな狭いとこでは捕まえにくいし、第一まだ『覚悟』ができていない(何の覚悟かって?それは秘密!)。とりあえず回り込んで追いかけることにした。

 ・・・・実はこの時、少し葛藤があった。自分の手で強盗を捕まえたいという心理と、見失いますようにという心理。前者はそのまま逃げられたら恥だという思い、後者は銃なんぞで撃たれたらしゃれにならんという思い。複雑な思いで強盗を探していると・・・・。


〜〜参照A〜〜
強盗逃走ルート・・・・
オレ追跡ルート・・・・

捕まえた場所・・・・
見にくい?気にしない気にしない。
その気になれば見れる!。
・・・・・・・・・・はず。


 いたよ。見つけちまったよ。なんか、ふらふらしてるみたいだけど間違いない。・・・・仕方ない。捕まえに行きますか!。

 「待て〜〜〜〜〜!!!」声を張り上げて叫びつつ、全開ダッシュ!。・・・・って10秒で追いついちまったよ。だって全然逃げる気配ないし、なんというか、ぼんやりしてて視点が合っていないような、そんな感じ。で、目前2メートルのところで睨み合い、間髪入れずカラーボールを投げつける!!

 「・・・・はうあ〜〜〜!!!」

 なんてこったい!カラーボールは強盗の体にあたった。あたったのだが、どうやら柔らかすぎて、割れなかったようだ。オー・マイ・ガー!。仕方ないので、組み伏せにかかる。「どりゃあああああ!!」・・・・とは叫ばなかったが、犯人を担いで投げ飛ばす!!必殺!天戯スペシャル!(後で聞いた話だが、どうも体落としに近い感じの技らしい)。犯人は年寄りだし、背格好も近かったからうまくいった。とりあえず組み伏せたオレは、そのまま強盗の体を押さえつける。

 が、我に返った犯人は「殺してやる!!」などと叫んで手に持っていたハンドバッグの中をゴソゴソ探る。ややややや、やべ〜〜〜〜!。やべ〜よ。そういえばこいつ銃を持っているんだっけ。どうしたらいい、どうしたらいいんだ?

 と、そこへ応援が駆けつけてきた!「なんか手に持ってるみたい!なんとかして!」必死で叫ぶ。間一髪!ハンドバッグは取り上げられ、遠くへ投げ飛ばす。ふ〜〜〜、やばかった!あと5秒遅れていたら、オレの体に風穴が開いていたぜ!よかったよかった。で、さらに応援が来て3人がかりで押さえつける。
 「分った、分った。もう逃げない。勘弁したから。」とうとう根を上げた。よっしゃ、後はK察が来るのを待つだけだな。初めから素直にそうしてればいいものを。

 ・・・・・・・・・・・・・・来ない。来ないな。相当待ってるのに来ない。10〜15分は待っただろうか。いいかげんヂーサンの上に乗っかっているのに疲れたよ。周りにぼちぼち人が集まってきて、ちと恥ずかしいし。と、そこへ、ようやくようやくサイレンの音。やっとかよ。ようやくヂーサンとのスキンシップをやめられる。ちなみに後で聞いた話では、K察はどうやら場所を近所の郵便局と間違えたらしい。全くおまぬけな話だ。

 ・・・・で、ようやくK察へ身柄の引渡し。ふ〜〜、やれやれ、ようやく楽になった。一息ついて立ち上がると、近所の郵便局長連中が勢ぞろいしてる。うわ!恥ずかし〜っす。こういう状況はひじょ〜〜に苦手だ。後は局長代理にまかせて、そそくさと退散しよう。・・・・と、その時、強盗が持っていたハンドバッグを調べていたK察官が一言。「なんだこれ?」ん?なになに?・・・・げ!拳銃って言ってたけど、これって拳銃型のライターじゃん!!。なんだよ、びびって損した。・・・・と思ったら、もう一言、「ナイフも落ちてるな」。
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だって?ナイフ??。見ると、確かに刃渡り15cm程のナイフが落ちている。どうやら強盗を投げ飛ばす時に、偶然ハンドバックからこぼれ落ちたらしい。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やばかった。すげ〜〜〜やばかったよ。万が一、ナイフがハンドバックの中に入ったままだったら、オレの体は串刺しだったよ。こえ〜〜〜!!

 さてさて、外の状況も一段落したし、局舎に戻って帰る準備を・・・・と思ったら、K察や監察らしき連中が、狭い狭い局舎の中でなにやら話をしている。はっきり言って、ほとんど身動きもとれない状態だ。「おまえら邪魔だから外で話せよ!」・・・・と、心の中で叫んだ。もちろん、誰も気付いてくれなかったが。

 17:00.時頃、山盛りになった書類を整理しようとしたら、K察へ出頭要請。どうやら事情聴取のようだ。では、ありのまま話をしてきますか!

 ・・・・・・・・20:00、全然終わる気配なし。それにめちゃめちゃ腹減った。K察に来てから、ずっと話しっぱなしで休憩も無い。最初は、結構テンション高かったが、今はテンションめちゃ低。つーか、いいかげんかったるくなってきた。「カツ丼くらい持ってこいよ!定番だろ!」と、マヂで言いそうになった。・・・・が、結局差し入れとして持ってきたのは、オニギリ2個。ヒーヒーいいながら強盗捕まえたのに、飯はこれだけかい!。仕事なのは仕方ないとしても、もうちっと気を使ってくれよ。

 23:00。ようやく終了したよ。めちゃめちゃ疲れた。途中でなぜかオレまで写真を撮られて、なんか自分が犯罪者になった感じだよ。すげー嫌な気分。正直言って、もう如何なる時にも、K察の世話になりたくないな。本気でそう思ってしまったよ。で、ようやく終了と思ったら、次の日に朝から実況見分だって。もう勝手にしてくれ。

 15日(土)実況見分。といっても、昨日大体話は済んでいるので、淡々と事は運ぶ。強盗との交渉、逃走経路、取り押さえ等々。結局1時間程で全て終了。解散。・・・・時間を無駄遣いしている気がするな。

 17日(月)K察からの表彰。といっても表彰状はA4の用紙に印刷しただけの恐ろしくちゃちいものだったし、記念品もよく分からん物だった。「全員で協力して逮捕」という設定らしく、記念品は全員一緒のもの。
 「捕まえたオレにだけ特別にハワイ旅行をプレゼント!!」・・・・なんて事は無かった。残念。次にテレビ局+新聞社からのインタビュー。テレビに映るのは当然初めて。なんか、緊張してしまう。人の話では「結構まともなことを言っていた」らしいのだが、よく覚えていない。同僚のFさんが家に頼んでビデオを録画して、ダビングしたのをもらったが、未だに見ていない(2004年6月現在)。なぜって、恥ずかしいから。

 

 一生に一度、あるかないかという体験をしてしまった。アレに比べたら、少々のハプニングなど、どうって事ないようにマヂで感じてしまうな。しかし、今度また強盗が押しかけてきたら、絶対に真っ先に逃げるだろうな。お金や名誉より、自分の命の方が全然大事だから。

  〜〜おまけ〜〜 

  記念品。

  どう見てもペン立て。

  誰が使うんだよ、こんなもん。